和歌山地方裁判所 昭和50年(わ)45号 判決 1975年10月31日
本籍
和歌山県海南市別所二七番地
住居
同 県和歌山市雑賀町二番地
遊技場経営
川原春一
昭和四年八月九日生
出席検察官
小野拓美
主文
被告人を懲役一年六月および罰金二二〇〇万円に処する。ただし、この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
右罰金を完納しないときは、金三万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
理由
(罪となる事実)
被告人は、昭和二一年三月現在の県立那賀高校を卒業し、直ちに父徳次郎の農業の手伝をし、昭和二七年末に和歌山県海南市名高にパチンコ店うぐいすを開業し、昭和二九年一二月ころ同市日方にもパチンコ店「ボールセンター」を開設営業し、昭和三二年ころ右パチンコ店「うぐいす」を廃止し、昭和三七年二月和歌山市にも進出し、同市雑賀町二番地にパチンコ店「南海ホール」(風俗営業〔遊技場〕の許可名義人は被告人の弟で店員の川原寛。昭和四二年に「ニユー南海」と名称変更)を、昭和四三年四月に同所にスマートボール店「うぐいす」(同許可名義人は弟で、店員の川原修)を開設し、これら遊技場(各経営規模は、ボールセンターでパチンコ台数が昭和四七年二月まで二二六台、その後二五〇台、従業員数が被告人の親族を含め一〇名位、ニユー南海でパチンコ台数四五三台、従業員数が同様に一二名位、スマートボールうぐいすでスマートボール機一〇二台、従業員数が同様に四名。なおパチンコ店ボールセンターの許可名義人を昭和三七年に弟川原寛に移す。)をそれぞれ経営する個人であるところ、家事を司るほか、被告人の右経営を補佐する妻川原節子と共謀のうえ、所得税を免れようと企て
第一 昭和四六年分の所得金額が三一八〇万一〇九四円で、これに対する所得税額が一五五四万〇六〇〇円であるのにかかわらず、売上の一部を記帳から除外し、除外分を架空名義の定期預金にするなどの不正な方法で所得を秘匿したうえ、昭和四七年三月一五日和歌山市湊通一丁目一番地所在の和歌山税務署において同税務署長に対し昭和四六年分の所得金額が一一八三万一二七二円で、これに対する所得税額が四〇三万四六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により所得税一一五〇万六〇〇〇円をほ脱し
第二 昭和四七年分の所得金額が五六四八万七六八〇円でこれに対する所得税額が三一〇三万三四〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正の方法により所得を秘匿したうえ、昭和四八年三月一三日前記和歌山税務署において同税務署長に対し昭和四七年分の所得金額が五五二万二七三八円で、これに対する所得税額が一〇七万〇五〇〇円である旨の虚偽の所得税額確定申告書を提出し、もつて不正の行為により所得税二九九六万二九〇〇円をほ脱し
第三 昭和四八年分の所得金額が八三九五万〇三〇〇で、これに対する所得税額が五〇一五万五八〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正の方法により所得を秘匿したうえ、昭和四九年三月一三日前記和歌山税務署において同税務署長に対し昭和四八年分の所得金額が八四九万六〇六〇円で、これに対する所得税額が二二九万二〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により所得税四七八六万三八〇〇円をほ脱したものである。
(証拠)
判示第一の事実につき
一、第一回公判調書添付の検察官請求証拠目録記載の請求番号二ないし五、一五、一一七、一一八、一三三の証拠
判示第二の事実につき
一、同番号六ないし九、一六、五五、一三四の証拠
判示第三の事実につき
一、同番号一〇ないし一三、一七、五五、五六、六一、七八の一、一二五、一三五ないし一三七の証拠
判示全体の事実につき
一、同番号一四、一八ないし五四、五七ないし六〇、六二ないし七七、七八の一、七九ないし八九、九〇の一、二、九一ないし一一二、一一五、一一六、一一九ないし一二四、一二六ないし一三二の各証拠
一、被告人の当公判廷における供述
一、大蔵事務官新田裕夫作成の昭和五〇年二月二七日付関係書類追送書
(法令の適用)
判示各所為につき
所得税法二三八条一項、刑法六〇条(懲役罰金併科)
併合罪の懲役加重罰金額合算
刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、四八条二項(懲役につき犯情最も重い判示第三の罪の刑に加重)
懲役刑の執行猶予 刑法二五条一項
罰金不完納のときの換刑処分刑 刑法一八条
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 杉山英巳)